サーマルモデルの使用例

LTspiceへのデバイスの追加の投稿では、オンセミのn-ch MOSFETのモデルの導入例を示しましたが、このモデルファイルには、MOSFETのモデルの他にサーマルモデル(パッケージの放熱特性のモデル)が含まれています。ここでは、サーマルモデルを含めたシミュレーションの例を紹介します。ただし、このモデルの説明書が見当たらないため、サーマルモデルの標準的な使い方を示しますので、モデルの詳細についてはメーカに問い合わせたほうが安全です。

  1. 下記の回路図を入力
    • 2N2007のモデル(モデル名はF2N7002として提供されている)は、3端子MOSFETのシンボル nmos を流用する。
    • サーマルモデル(モデル名はF2N7002_Thermal)は、ここでは電圧源のシンボル(voltage)を流用している(紛らわしいので、専用のシンボルを作ったほうがよいかもしれない)。
    • B1は、ビヘイビア電流源(bi2)を使用。ビヘイビア電流源は、設定した計算式によって電流を生成する。
    • Vgs, Vds, V2は、普通の電圧源を使用。
    • 配線名 D, G, Tj をつける。
  1. MOSFETのシンボルを CTRL+右クリックして、Prefix = X, Value = F2N7002 を入力
  1. 上の回路図でX1とラベルがついている電圧源は、CTRL+右クリックして、Prefix = X, InstName = X1, Value = F2N7002_Thermal を入力
    • InstNameは変えなくても問題ないが、電圧源と間違えないよう、X1に変更した。
  1. 電圧源Vgsは下記のようにパルスを入力、電圧源VdsはDC 5Vとする
  1. B1のビヘイビア電流源は、右クリックして、Value = -I(Vds)*Vds とする(マイナス符号に注意)
    • 上記の計算は、MOSFETのドレイン電流による消費電力を求めている。通常、サーマルモデルは消費電力によって発生するジュール熱から温度を算出するので、回路シミュレーションにより消費電力を測定する必要がある。
  2. V2に室温を電圧値として設定する
    • ここでは、25度Cを想定して、DC 25V とした。
  3. SPICE Directive として、.lib と .tran 100ms を入力してシミュレーションを実行

配線名 Tj の電圧が、パッケージ内の半導体の温度を表す(多分)。電気的な最大定格にはかなり余裕があるが、ドレイン電流が流れる度に温度が上がっていくのがわかる。

このサーマルモデルは、2端子のモデルになっているため、+側が半導体の温度、ー側が大気温度またはパッケージの温度と思われるが、説明書がないため、実際には何の温度に対応するかは不明。